考えてみると将棋のハンデ戦というものにはいろいろとナゾが多い。たとえば、香落ちと角落ちの差は大きすぎないだろうか?なぜ金銀を落とす手合いは存在しないのか?そもそも駒を落とす以外のハンデは考えられないのか?・・・などなど。素朴な疑問すぎて、答えはもちろん用意していない。まだまだ実験が足りないのだろう。
駒落ちというものは、プロにとってはあくまでも指導用のものであって、根を詰めて研究するような類のものではない。それはプロの世界がすべて平手であることが、大いに関係していると思う。たとえば公式戦に香落ちが取り入れられれば、その定跡研究は格段に進歩するだろう。方法は頭の中にはあるが、それはこの項のメインでないので書きません。実現したら面白いと思うんですけどね。ちなみにもしプロがやったら、下手勝率7割前後と予想します。アマチュア同士なら6割ぐらいでしょうか。単なる予想で、根拠は全くありません。
こういうことを書いているのは、実際に駒落ちが、どのぐらいの差を縮めるものなのか、はっきりしていないと思っているからに他ならない。他のプロと話をした感じでは、自分は駒落ちのハンデを小さく評価するほうだということが分かった。それはたとえば、プロ同士の角落ちは下手が全勝だろうという人もいる一方で、僕は、10番に1、2番は入る手合いだと思っているから。
それはさておき、角落ち・飛車落ちというのは定跡があまり洗練されていない。これはほとんどのプロが賛同してくれるだろうと思う。だから勝負を争うというのでなく、定跡研究という観点から、プロ同士の大駒落ちをやってみるのも面白いと思う。角落ち・飛車落ちの指導将棋を見ていると、人によって本当に教え方が違う。手合いによってコツがあるはずだが、その研究が進んでいないと感じる。
ちなみに僕は自分なりの方法論は持っているが、それが正しいかどうかは分からない。何と言っても下手側で「実地検証」したのが15年以上前のことですからね。おそらくほとんどのプロがそういう状態ではないだろうか。
一方洗練されているのは何と言っても二枚落ち。僕は冒頭の答えというわけではないが、「上手先手」というルールこそがこの優れた定跡を生み出したと思っている。この定跡が生まれたというだけで、「上手先手」というルールの存在価値はあると言っても過言ではないと思う。
図は4手目▲4六歩までの局面。あまりにも有名なこの一手は、ここで突かなければもう間に合わない。「盤上この一手」なのである。これほどぴったりした一手を僕は他の定跡では知らない。できれば初心者を卒業したすべての将棋ファンが、この定跡を勉強してほしいと願っている。この4手目に始まり、上達のあらゆるエキスが、二枚落ちの二つの定跡には含まれていると考えている。
二枚落ち以上となると、さすがにプロ同士なら目をつぶっても勝てる差なので、プロ同士でやる意味はないだろう。ただし、指導法の研究は必要だと考えている。その話はまた来月書きたいと思います。
駒落ちの指導法についてあれこれ考えているのは、ひとつには自分自身で駒落ちを指す機会があること。それから、先日も紹介したような、いろいろな試みをしている人がいることを知ったから。これからはプロがもっとアマチュアの中に飛び込んでいかなくてはいけない。その際、プロにできることはやっぱり第一には技術指導だと思う。その方法論を研究して、共有していくことは絶対に必要だと思うのである。